鏡餅、橙=薯蕷饅頭製、餅花=麩種製。







釣灯籠=芋つなぎ製、
茶の花=生砂糖と餡平製
火縄=餡平製。


[釣書の交換]
 縁談の世話を頼むには、本人なり、両親、又はそれに準ずる人が、交際が広く、信用の置ける人にお願いする場合が殆どである。恋愛結婚の場合は別として、縁談そのもののお願いであるから、身上書といって、簡単な履歴書、家族構成、趣味、特技を書き健康診断書、写真を添えてお願いするのが一般的である。京都ではこれを釣書という。昔は女性側だけから渡す事が多かったが、現在では両方で交換する。結婚の世話を頼まれた人は、出された釣書をもとにして、しかるべき候補者をさがし、その人からも同じ様に釣書を提出させる事になる。この釣書の仲介者は、釣書に書いてあるだけでなく、両者の事情を出来るだけ正確に、具体的に伝えなければならない。実際以上に良く伝えたり、不都合な事を隠しだてしたりする事がない様に…。これを釣書の交換という。この時点で仲介者は仲人ではないけれども極めて仲人になって頂く可能性の大きい人と考えられる。従って両家の事で、何回か足を運ぶ事もしばしばあろう。又仲人を頼んだ本人や家族も、話しを進めて欲しいという意志表示が必要である。玄関の立ち話で、「宜敷くお願いします」というだけでなく、三者共、お菓子と昆布茶を差し出す位の積極性が欲しい。釣書の交換で、お互い会ってみようか、という気になったらお見合いへと駒が進む。
<笑くぼ薯蕷 千代結 松葉等のお千菓子>

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巻纓の冠とおいかけに弓=生砂糖製、
北野神社梅鉢紋=押物製。







菊花=コナシ製、菊葉=有平製、
熊手と箒=餡平製。

[見合い]
 仲人とは、結婚の仲立ちをする人の事で、ナカビトという言葉で、既に「日本書記」「古事記」に記載されている。ここでは、男の意向を代表して、女の承諾を求める使者の義に使われ、恐らく仲人というものの、最も古い形式であると思われる。世の中が移り変わり、村内結婚から村外へと、婚姻を求める範囲が広がるにつれて、仲人が必要となってきた。存在価値が大きくなると同時に、様々な形式や儀式が生まれてくるのも当然である。古い時代の見合いと言えば、その殆どが既に親同士で打ち合わせが整い、形式的に2人を引き合わせる、といったものであった。こんな形の見合いの席で、断りでもすれば相方共に気まずい思いをしたり、仲人にまで大きな溝を作る事になる。恋愛結婚至上主義の今日では、旧体質の見合いは姿を消している。釣書の交換の後、お互いがあらゆる角度から判断し、相手に一応の関心をよせたなら、1度会ってみよう、という事で見合いが成立する。従って見合いの傾向も、服装にしても、場所にしても、すべての面でリラックスしたものになってきた。見合いの後、気にいらなくて断わるとしても、相手を傷つける事にもならないし、逆に態度を保留し、返事を引き伸ばす方が失礼だと言っても過言ではない。恋愛、見合いは意見の分かれるところであるが、両者共男女の出会いの1つと考えれば問題は一気に解決する。むしろ、後から出てくる障害を事前に発見出来る長所も備えているのではないだろうか。但し、周囲の人々の好意や、お膳立が必要なだけに、その点留意しなければならない。

<大内山 扇面 笑顔 紅白薯蕷>

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左=飾り粽、
桃の花=生砂糖製。

[扇子の交換]
 仲人の手びきで婿が内諾済みの上、嫁方に面接に行く時、承諾の印として「扇子忘れ」等と言ってわざと扇子等の持物を置いて帰った。この様にかなり男性側の一方的な見合いの名残りが「扇子の交換」である。以前は見合いの席で交換する場合が多かったが、現在では、双方が仲人を介して、料亭でとりかわしたり、又仲人宅でとりかわしたりしている。京都では、男性側から、女性側へ、新婦として挙式当日使用する房の付いた金銀の扇子を納め、これに対し、女性側から男性側に男物の扇子を納める。扇子の交換もかなり古くから行われていた形式であるが、最近は、恋愛カップルが、省略された見合いの時点でかわされていたこの習わしを、独立した儀式に格上げした結果になった。恋愛結婚が増加傾向にある中で、婚約期間中のある種の演出や、意思表示の手段として、盛んに利用するようになった。結納の儀へのスムーズな進行役とも言える。

<紅白薯蕷 扇面 自出度い干菓子>

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碁盤=押物と羊羹製、
共白髪=有平製、帯=コナシ製。








俵=薯蕷饅頭製、
飾り松=生砂糖製、共白髪=有平製。

[結納]
 見合い、扇子の交換を、婚約の第1段階とすると結納の儀はその第2段階である。結納の目録に書かれている、熨斗、松魚、昆布、柳樽等の文字からわかるように、本来、結納とは、「ゆいのもの」と言って新たに、親族関係を結ぶにあたり、共同に飲食する酒肴を意味するものである。結納の儀に使用される引菓子のデザインの中に、海老、鯛、蛤、等があるのもこれに由来している。もちろん壽、扇面等、縁起のよいデザインでもさしつかえないが、鶴亀、松竹梅は、披露宴用のデザインである。最近では、結納によって婚約が確立する重要な儀式とみなされ、かなり早目に結納をとりかわすのが一般的である。そして、その間婚約が不成立にならないよう、心がける贈物という性格を持ち、単に手じめの為の酒肴料というよりは、嫁の持参品の対価という意味が強くなってきた。御帯料と言われる結納金が重視され、目録に書かれるその他の項目は百貨店に行けば一揃えで売っている程形式的な時代となっている。結納の取りかわしは、通例、吉日の午前中を選び、仲人によって行われる。仲人がまず婿方の家へ行き結納の品を受け取って、嫁方へ収める。嫁方は、仲人に祝い膳を出し、この時点で結納式は終了する。こうして結納を済ませた仲人は、今度は嫁方の受書をもって、再び婿方に戻ってくる。
<引菓子 紅白薯蕷>
写真は、京菓子協同組合青年部結成20週年誌より掲載。
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